ケージフリーとは?平飼い・放し飼い・エイビアリーの違いを徹底解説

ケージフリーについて ケージフリーと卵産業の基礎知識

はじめに:なぜ今、ケージフリーが注目されるのか

スーパーマーケットで卵を手に取るとき、その卵がどのような環境で産まれたかを考えたことはありますか?日本では現在、採卵鶏の約95%がバタリーケージという狭い金網の檻の中で飼育されています。しかし、世界では動物福祉の観点から、鶏により自然で快適な環境を提供する「ケージフリー」飼育が急速に普及しています。
この記事では、ケージフリーの基本概念から、平飼い、放し飼い、エイビアリーシステムの違いまで、わかりやすく解説します。


ケージフリーとは?基本の意味と背景

ケージフリー(Cage-Free)とは、鶏を狭いバタリーケージ(Battery Cage)に閉じ込めず、鶏舎内で自由に歩き回れるようにする飼育方法を指します。
ただし「ケージから出している」というだけで、必ずしも屋外に出られるわけではありません

  • ポイント
  • 室内で自由に移動可能
  • 止まり木や巣箱、砂浴びスペースがある場合が多い
  • 屋外アクセスは必須ではない

ケージフリーの背景には、**動物福祉(アニマルウェルフェア)**への意識の高まりがあります。従来のバタリーケージは、鶏一羽あたりA4用紙1枚程度の面積しかなく、羽ばたくことも砂浴びもできない環境でした。そのため、欧州を中心に「ケージ飼育の廃止」運動が広がり、企業や消費者も選択肢を変えつつあります。


日本と海外におけるケージ飼育の現状

  • 日本
  • 約90%以上がバタリーケージ飼育
  • ケージフリーはまだ少数派
  • 一部の有機卵ブランドや直売所で導入
  • 欧州
  • EUでは2012年に旧式のバタリーケージ禁止
  • 多くの国でケージフリーや放し飼いが主流
  • 米国
  • カリフォルニア州などでケージ飼育禁止法を制定
  • スターバックスやマクドナルドなど大手がケージフリー宣言

世界的には「ケージ飼育=時代遅れ」という認識が広まりつつあります。


平飼い(フリーレンジ)とは

日本で「平飼い」と呼ばれる方法は、地面(または床)で自由に動き回れる飼育方法です。鶏舎内の床に木くずやおが屑を敷き、鶏がつついたり砂浴びできるようにしています。

  • 特徴
  • 屋内限定でもOK
  • 屋外に出る権利は必須ではない
  • 日本の有機JAS認証では屋外運動場が必要

平飼いは「ケージフリー」に含まれますが、より自然な行動をとりやすい点がメリットです。


放し飼い(フリーレンジ/パスチャーレイズド)とは

放し飼い(Free Range)は、鶏舎から屋外へ自由に出入りできる環境を備えた飼育方法です。「パスチャーレイズド(Pasture Raised)」はさらに一歩進み、広い牧草地での生活を主体とする形です。

  • 条件例(国や認証による)
  • 屋外アクセスが一定時間保証される
  • 一羽あたりの屋外面積が規定される

放し飼いは鶏にとってより自然な環境ですが、天候や外敵のリスクもあります。


エイビアリー(Aviary)とは

エイビアリーは、多段構造の鶏舎で立体的に飼育するケージフリーの一形態です。止まり木や巣箱、給餌器が複数階に設置され、鶏が上下に自由に移動できます。

  • メリット
  • 鶏の行動範囲が広がる
  • 設置面積あたりの収容効率が高い
  • ケージよりは自由度が高い

ケージフリー・平飼い・放し飼い・エイビアリーの違い比較表

飼育方法屋内自由移動屋外アクセス鶏の自由度主な特徴
バタリーケージ××極めて低い狭いケージ内
ケージフリー任意中程度屋内自由
平飼い任意(有機認証では必須)中〜高床で飼育
放し飼い屋外で行動可能
エイビアリー○(立体)任意中〜高多段構造

なぜケージフリーが注目されるのか

動物福祉の観点から、鶏が羽ばたきや止まり木に登るなど自然な行動をとれる環境は、精神的ストレスや骨折リスクの低減につながります。また、企業の社会的責任(CSR)の一環として、大手食品企業がサプライチェーン全体でアニマルウェルフェア基準を導入する動きが加速しています。さらに、消費者の価値観も変化し、健康や環境、倫理に配慮した食品を積極的に選ぶ人が増えており、ケージフリー卵への需要が拡大しているのです。


世界のケージフリー政策と企業の取り組み

EUでは旧式ケージの使用がすでに禁止され、2030年までにすべてのケージ飼育を廃止する目標が掲げられています。米国では州単位での禁止法や企業の自主的な移行が進み、大手流通や外食チェーンがケージフリー卵を採用する事例が増加中です。一方、日本には法的規制はないものの、国際的な潮流を受けてホテルチェーンや外食産業でケージフリー宣言を行う動きが広がっており、社会的な注目度が高まっています。


ケージフリー卵を選ぶメリット・デメリット

メリット

  • 鶏の福祉向上
  • 卵の質や風味の向上(環境による影響)
  • ブランド価値の向上

デメリット

  • コスト高(飼育スペース・管理人件費)
  • 生産効率低下
  • 屋外放牧の場合、病気・外敵リスク

まとめ:卵選びの基準を自分で持つことが大切

「ケージフリー」はあくまでケージを使わないという意味で、必ずしも自然放牧を意味しません。平飼い・放し飼い・エイビアリーなどの違いを理解し、自分の価値観や予算に合わせて選ぶことが重要です。

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